高校時代のことだった。
 ある日の休み時間に、後ろから何か視線のようなものを感じる。振り返ってみると、そこに当時ぼくが好意を抱いていた人がいて、ジッとぼくを見つめているではないか。
「えっ、あいつ、まさか、おれのこと・・」
 そのことがきっかけで、ぼくの好意は恋心へと変わり、その後何年間も彼女への想いに縛られることになるのだ。

 しかし考えてみると、あの時彼女は、ぼくのことをジッと見つめていたわけではなく、実はぼくの後ろにあった黒板を、ボーッと見ていただけかもしれないのだ。
 なぜなら当時の彼女は、何よりも部活優先で恋愛にはあまり興味がないようだった。その証拠に、何人かの男子から交際を申し込まれたらしいが、部活を理由にすべて断ったと聞いている。そんな部活女が、周りから変人扱いされていたぼくに、想いを寄せるはずがないじゃないか。

 とはいえ、当時のぼくにそんな冷静さはなく、彼女が交際を断った話を聞いた時も、
「あいつ、やはり、おれのこと・・」なんて思っていたものだった。
 結局ぼくと彼女は、同級生以上の仲にはならなかった。つまり異性としての縁がなかったわけだ。
 今さらどうなるも話でもないのだが、今でも時々、あの時の真実を自分の中で追求している。